今回は題の通り, 1次元での熱平衡について.
つまり, 金属線を加熱したときに, 最終的にどのような温度分布になるのかを考えたい.
これはPoisson方程式(Wikipedia: ポアソン方程式)またはHelmholtz方程式(Wikipedia: ヘルムホルツ方程式)と呼ばれる式によって知ることができるのだが, 個人的に納得のいかないところがあり, 前回の更新から少し間が空いてしまった.
決してグラブっていたわけではない.
基礎方程式の導出
まずは金属線を1点で加熱する状況を考える.
長い時間加熱を続ければ, 加熱と空冷とがつりあうことで,
金属線の各部分の温度は時間変化しなくなる(この状態を熱平衡と呼ぶ).
図1 金属線を伝わる熱 |
金属線をまっすぐに伸ばして 軸に平行に置き, 原点 ()で加熱する.
このとき位置 ()にある長さ の微小部分は, 左側から の熱を受け取り, の熱を右側に伝え, それと同時に空気中に熱 を逃がす(図1).
これらがつりあっているので, \begin{align} Q_1(x)=SQ_1(x+\Delta x)+Q_2(x) ~\Leftrightarrow~\frac{Q_1(x+\Delta x)-Q_1(x)}{\Delta x}+\frac{Q_2(x)}{\Delta x}=0. \tag{1} \end{align} ここに更にFourierの法則(Wikipedia: 熱伝導)と, Newtonの冷却の法則(Wikipedia: ニュートンの冷却の法則)と呼ばれる法則を適用する.
これらは次のような法則である:
- 同じ物体を伝わる熱の大きさ は, その温度差に比例する.
- 違う物体(例えば金属と空気)を伝わる熱の大きさ も, その温度差に比例する.
これを数式にすると, 位置 の金属線の温度を とし, 常温を として(加熱地点から十分離れた場所での温度は空気の温度と一緒なので), \begin{align} Q_1(x) &= -\lambda S\frac{d\theta(x)}{dx}, \\ Q_2(x) &= hS'(\theta(x)-\theta(\infty)). \end{align} ここで は熱伝導率(Wikipedia: 熱伝導率), は熱伝達率(Wikipedia: 熱伝達率)と呼ばれる定数で, は金属線の断面積, は微小部分の表面積である.
これらを 式に代入して とすると, \begin{align} -\lambda S\frac{d^2\theta(x)}{dx^2}+h\frac{S'}{\Delta x}(\theta(x)-\theta(\infty))=0 \tag{2} \end{align} が得られる. これが今回の基礎方程式である.
ただし は温度に依存せず金属線中で一定だとした.
1次元問題
早速 式を解いてみる.
金属線の断面が半径 の円であるとすれば
\begin{align}
S=\pi r^2, \qquad S'=2\pi r \Delta x
\end{align}
なので, これを 式に代入して
\begin{align}
&-\lambda\pi r^2 \frac{d^2\theta(x)}{dx^2}+2\pi hr(\theta(x)-\theta(\infty))=0. \\
\Leftrightarrow& -\lambda r\frac{d^2\theta(x)}{dx^2}+2h(\theta(x)-\theta(\infty))=0. \tag{3}
\end{align}
簡単のために とすると, 上式は
\begin{align}
-\lambda r f^{\prime\prime}(x)+2hf(x)=0 \Leftrightarrow f^{\prime\prime}(x)-\alpha^2 f(x)=0
\quad(\alpha:=\sqrt{2h/\lambda r})
\end{align}
となる.
これの解は定数 , を用いて
\begin{align}
f(x)=Ae^{-\alpha x}+Be^{\alpha x}
\end{align}
と書けるので,
\begin{align}
\theta(x)=Ae^{-\alpha x}+Be^{\alpha x}+\theta(\infty) \tag{4}
\end{align}
となる.
定数 , は境界条件によって定まる.
たとえば加熱点の右側では, 温度は発散しないという条件から である.
図2に, 半径 の銅線を3点
で 度に加熱した場合の温度分布を載せておく.
各種定数は , ,
とした[1].
図2 金属線の温度分布 |
参考文献
[1] 熱伝導率, 熱伝達率 - Wikipedia